第18章 献身的な愛 南伊
なんでお前は焦ってないんだ?
お前は子分から何も聞いてないのか?
「おまっ…げほっ…げほっげほっ!!」
「あーほらほら、喘息なのに無理するから…ほらスマホ、割れてるよ。」
「ごほっ……っおい!!ロヴィ?!ロヴィーノッッ!!」
いくら呼んでも、叫んでも、あいつの声はもう聞こえなくて、代わりに聞こえるのはノイズだけ。
「っ!!」
唯一のスマホが使い物にならないならただひたすら足を進めるだけだ。
悪い、と悪友に一言言ってから眩む視界を振り払い再びロヴィーノの元へ走った。
「…どしたのあの子」
「何だろうな…」
「ロヴィーノて言いよったな?」
「あ?ああロヴィーノと電話してたんだろ」
「………」
「どしたのトーニョ」
「…親分も行くわ、多分学校やんな。ギルちゃんバッグ頼むわ」
「けせっ!?」
「ちょ、トーニョ!!?」
───────
「げほっげほっ…はぁ…くっそ」
こんな時に最上階までの階段と喘息なんていう鬼畜コース。
気管と胸が苦しい。焼けるような感じがうざったい。
疲労と喘息で先程よりも確実に走るのスピードが遅くなっている。
足の速さには自信があったのに、俺ってこんなに遅かったっけ。
視界に入るプレートには“4階”と書かれていた。
もうすぐ。後2階。
重い足に鞭を打ち、一刻も早くロヴィーノの元に。
「あった…!」
見慣れた朽ちりかけの扉。
夕陽が差す屋上への入口に手をかけて思いっきり、開いた。
「ロヴィーノ!!」
今まで出したことのない位の大きな声であいつの名前を呼ぶ。
掠れた世界の中、やっぱり目のいい俺はすぐに茶髪のそいつを見つけることは出来たけど、
「…ロヴィーノ…ッ…?」
「…よぉ、早いじゃねーか」
探してたそいつは、柵の向こうで俺に背を向けて立ってた。
上から下までボロボロで、高級そうなカーデからワイシャツまで破れてて。
「おい…どうしたんだよ…おまえ…」
「……」
いつまでも答えないそいつの元へ行こうと足を進めると「来んじゃねぇ」と怒声を浴びた。