第12章 до свидания 露
さっきまで目の前にいたイヴァンは、いつの間にか遠くに見えたかわりに、夕日にチカつく銀髪は何故か横目で直ぐに確かめることが出来る。
「てめーもこりねぇな、欲しい物全部奪うのもいい加減にした方がいいぜ?」
すぐ傍で聞こえたカッコつけの声。
身長が大差変わんないから息が耳にかかる、擽ったい。
「そんなぁ、まだ奪ってないのに。そういうキミもいつまで最強ぶってるの?もうキミの時代は終わったはずだよね?ギルベルトくん」
「俺様はいつの時代も最強なんだぜ、知らねぇのかよシベリア野郎、」
「口と態度が悪いのは昔からだね、もう一回池に落としてあげようか?」
俺の後ろでバチバチとぶつかり合う目と目。
このままじゃイギリスの3分の1はどちらかに持っていかれることになるぞ、嫌だ、露領にも普領にもなりたくない…!罰ゲームだ、拷問だ、生き地獄だ…!!
(あばばばばば…!どうしてこうなった…神様はインフルエンザなのか…ノロウイルスなのかぁ!!)
しかしそんなメンチの切り合いは長く続く事は無かった。再び静かな雪解風がふく時にはイヴァンのふふ、と笑う声が聞こえてきたのだった。
「…つまんないの、横取りだなんて。 まあいいや、今日のところはギルベルトくんに譲ってあげる。調教でも拷問でも何でもすればいいよ。
でも次あった時はローナちゃんは僕のものにするから…ね」
「俺はものじゃねーよ!!」
「…あ、そうそう、君もそろそろ自分の気持ちに気づいた方が良いよ」
「は?」
「君の好きな人が…可哀想だよ?」
「えっ、ちょ…!」
どういう意味だよ、それ。そういう間も無く、イヴァンは後ろを向いてそのまま言ってしまった。
その背中が、妙に寂しく感じたのは…何でだろう。
「…ったく、油断も隙もねぇ…おいローナ?」
「!?」
しまった、無駄な居心地の良さにすっかり腕の中に収まって油断していた。
素早く後ろに後ずさって遠くに下がると、ギルは呆れたように笑った。
「お前も女だな、やっぱ」
「ど、どういう意味だよっ!」
「そのまんまだ、帰んぞ」
そう言って頭をガシガシと撫でられると、なぜか体温が上がった気がする。
痛てぇよ、馬鹿。
「あー?なんかいったか?」
「何でもねぇよ馬鹿!!」