第12章 до свидания 露
「お、おまえら…なにしてんだよ!!」
自分の瞳と似たように顔を赤く染めたギルベルト、そんな顔するなんて今まで知らなかった。
(…いや別に知りたくもねぇし…!なんだよあいつ、あんな顔しやがって)
見たことのない顔をするギルにギュッと胸を締め付けられた。気がした。
「黙れ不憫こっちみんな死ね!」
それがどうも気に食わなくて、口を咄嗟に開けると思ってもなかった可愛くない言葉がつらつらと流暢に。
「なんだとてめぇ!!」
そう喚くあいつに背を向けて乱れた服を整える。
今までの事見られたことに無駄な羞恥心がこみ上げてくる。なんで、よりによってあいつなんかに、
ぐるぐる空回る思考回路、いっそここで死んだ方がいろんな意味で楽なのかもしれない。
もうこの短時間で色んな事が起こりすぎだろ、本田の家にあるハーレム漫画かこれは。
(落ち着け、クールになれローナ・カークランド…!ええと、一時間前は…そうそう世界会議サボってゲーセンいってて…よし、整理できる…)
こんな時でもすぐ頭が冴えるのはきっと自分のいい所。やっと今の状況とやるべき事が浮かび上がってきた。
「全てはローナちゃんが僕の家に来てくれればいい話だよ?」
「まだ言ってんのかよ!!」
「なんで?さっきまでローナちゃんだってノリノリだったのに」
「おまえん中ではな…って痛てぇよ!!いっだだ、…?」
それでもこれ以上あの不憫にこの現場を見られたくなくてしつこく絡んでくるイヴァンを剥がそうとすると、引き止められる腕に込められる力が俺に“何か”を訴えてるような気がした。
違和感を感じてそいつの顔を伺うと、どこか悲しそうな、切なそうな顔をした大国が、そこにいた。
「……イヴァン?」
「……ローナちゃん…僕ね、」
雪解風が静かに吹いている1、2秒の間の静けさ、何かを伝えようと開きかけた口を閉ざしいつものように微笑まれると、
違う冬の匂いが鼻腔を掠めた。
「ローナ」
違う方向から引っ張られた腕、
風に乗って香る、背伸びし過ぎな香水と力で隠しきれてない不器用さ。
その力に身を任せていると、厚い胸板にたどり着いた。
「そこまでだぜ、欲しがりや」