第12章 до свидания 露
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「……はぁ、まいったな」
断られるのは重々承知してたけど、まさかああなるなんて思わなかった。
ほんと、邪魔だなあ。ギルベルトくんも僕の心、も。
こんなだと、こっちが気が狂いそう。
「…駄目だよ、僕。また奪うようなことしちゃ」
自分に言い聞かせるように胸を思い切り叩く。
ズシン、と鈍い痛み。
でも僕自分に弱いからなー、ずっと見張っててもらわないといけないよね。
それも、ずっっっと僕の傍に居てくれる酔狂な子じゃないと。
「そうだよね、ナターリヤ」
姿の見えない…いや、姿を見せない彼女に向かって名を叫ぶ。
大丈夫、僕が名前を呼べば何処からだって出てくるよ。
「呼んだかしら、兄さん」
ほら、何処からでて来たの。
コツンコツンとヒールを鳴らしながら姿を現した僕の妹。
ほんと、黙ってれば綺麗なのに。
「今までの、全部聞いてたよね」
「……」
「盗み聞きは良くないよ、それにかっこ悪い所見られちゃったし」
「兄さんはいつでも格好良いわ、それにちゃんと退いたじゃない」
「あれは…彼女の口から拒否されるのが怖かっただけだよ」
「…兄さん」
ナターリヤが僕の背中に抱きついてきた。
さっきまであんな遠くにいたのに。
「私は兄さんの傍に居ます…いつか世界が滅ぶ、その時まで、ナターリヤは…貴方の傍に…」
「…うん、ありがとね」
彼女なら、暴走しようとする僕を止められるはず。
それから、姉さんも入れば十人力…いや、百人力だね。
「…あったかいや」
いつか、その時まで…до свидания(ダスビダーニャ)
END