第12章 до свидания 露
「いいか?まずは空気が大事だ。“キスしていい?”なんて言う必要の無い、言わせる必要の無い空気を自ら作り出せ」
「うん、」
「それから心を落ち着かせる。くれぐれもキスしたい衝動に駆られて先走るんじゃねぇ。んな童貞みたいな事すんな。紳士的に、スマートにいけ。」
目の前にいるのは本当に女性か、意気揚々とパツィルーイについて語るローナは何故か彼女の兄よりも男らしくて頼もしく見えてしまったのはいい事なのか、それとも悪いことなのか。
複雑な気持ちになりつつローナの言葉に耳を傾けながら一笑懸命に語る彼女の顔を見つめる。
すると、乾燥する時期だからか、時々無意識だろうが唇をチロっと舐めているのを見ると、胸が高鳴ったのが自分でも分かった。
一瞬だけ見えた、赤い舌。水気を含んだ小さい唇。
「そんで……おい、聞いてんのか?」
身長の差で自動的に見上げる形になる、そのせいで余計に自分で理性を保てなくなるのは仕方ない事だろう。
「無視とかいい度胸だなゴラ…っ、!」
華奢な腰に手を回すと、すんなり距離が近くなった。それからもう一度顎を持ち上げてその皮肉ばっか並べる唇を奪った。
「っ!?っん゛、んん!!」
必死な顔で抵抗しようとするも、男の力には到底適わずに撃沈。
最初は触れ合うだけの、それでも徐々に角度を変えてキス、またキス、しばらくすると舌も入り込んできた。
世に言うディープキス。
「ん、ちゅ…はぁ、…っん、ぅ」
隙間から垂れた唾液も気にせずキスを続ける、たまに目が合ってもやめる気配もないようでローナの酸素足りねぇよといいたげな叩きも気にも留めず、ただひたすら口内を犯し続けた。
恐らく今の彼の心情はえ?紳士的でスマートに?ロシアにそんなサービスないってばー、というところだろう。
「ちょ、…っイヴァ、ン…むりっ…」
流石に酸欠が来て了承も無しに顔を背けると、既にだらしなく二個開いているシャツのボタンを更に開け始めた。
はだける首筋に汗が伝う、思わず喉を鳴らした。