第12章 до свидания 露
なにがなんでも俺 のせいにしたがるのはなんだ、そんなに恨んでるのか。
いやだなあ、こんな大国喧嘩売った覚えは…まあ無くはないけど。でも謝ったじゃないか、え?あんなの謝ったに入ってない? うるせぇ人それぞれの価値観あんだよ。だったら泣き叫んでやろうか。
そんな風に思いながらギリギリと歯を食いしばりながら精一杯睨みを利かせる。
こんな状況でも未だに強気なローナの青緑の瞳が普段は気候とはまるで違う温かくて垂れた優しい彼の瞳とぶつかった。
しばらく無言で睨み合っている(一方的に睨んでるの間違い)と沈黙と威圧に耐えきれず最初に折れたのは、彼女だった。
「……1回だけなら」
聞き取れるのが厳しいくらいの小さな声。それでもイヴァンの耳にはちゃんと届いたのは今までの沈黙のせいか、それともイヴァンが期待していたからか。
「わぁ、ホント?大丈夫、僕も1回だけのつもりだし」
うふ、と幸せそうに笑うと自然と顔を背けてしまった。しかし、気に止めずにくいっと指で顎を上に上げる。
5cmの差は結構大きかった。普段見下げることの方が多い彼女にとっては、馴れないこの景色。
もう逃げ場はない。 前と後ろで挟み撃ちにされ、色んな意味で負けと認めるしかなかった。
「君の家って世界一キスが上手い国なんだよね?」
「あ、あぁ…」
そういえばそんなランキングがあったな、ローナが懐かしむようにつぶやく。
「凄いよねー、普段は素っ気ない態度で皮肉ばっか吐いてるエセ紳士なのに2人きりになると情熱的になるなんて」
「ま、まぁな!!当たり前だろ!!」
「尊敬するよー、僕もキス上手になりたーい」
「ははん、仕方ねぇな…」
こっそり馬鹿にされてるとも知らずに平らな胸を張りながら得意げに声を張るローナ。
チョロい、チョロすぎる。思わず口を覆ってしまう。
イヴァンの心の中のペリメニが破ける前にローナが先程の反抗的な態度とは違った様子で彼の服をクイクイっと引っ張りながら話しかけた。