第12章 до свидания 露
威圧感。ちらっと見上げると素朴で優しい笑顔で俺の事見てるけど殺気が漂ってきてますやん。嫌やわー。
「また失礼なこと考えてるでしょ」
「そ、そんなことないですよイヴァン様ーwwwwwあはあはあはっはーwwwwwwwwあっ、ほらほらみんなのとこ戻りましょ!!」
この空気が嫌で話を逸らしながら逃げようとするとあっけなく腕を引かれ、ドンッという音と同時に壁に背が激突した。
「い゛っ」
「君ってほんと面白いよね、ローナちゃん見てると段々僕の手で泣かしたくなるんだよー」
抵抗しようとすれば、折れそうなほど強く掴まれている腕に余計に力が篭る。
「い、痛てぇ!!」
良くて骨折悪くて腕さんバイバイなんて洒落にならないくらいの痛さに目に涙が滲んできた。
しかし、それをみたイヴァンは離して謝るどころかいつもの笑顔で面白おかしくこういうのだった。
「あは、痛そう。でもローナちゃんが悪いんだから仕方ないよね?」
「っ…」
「…許して欲しい?」
さっきまで掴んでいた腕を離し、指先で俺の唇をなぞった。
「じゃあさ、」
擽ったいような感覚に、ピクリと眉間が動く。
そして、耳元で囁かれる。
「パツィールイって、わかるよね?」
聞きなれない発音。でも自分で言うのもなんだけどそこまで馬鹿じゃないし、ロシア語は軽く勉強したから少しなら理解できる。
でもこの状況で理解したくなかった…!!
パツィールイ…とは、俺んとこで言うキス。つまり、イヴァンはキスしろと言っている。
「……はぁあぁ?」
腹の底から声が出た、意味わからなすぎて。
この流れでどうしてキスする必要があるんだ。
それただお前がしたいだけだろ、ふざけんな。
「ねえローナちゃん、ほぼ全部口に出てるからね」
そしてこの笑顔である。
もはや俺に拒否権はないらしい。そう笑顔で語りかけられてる様なもんだ。
そうだな、イヴァン風にいうと「え、拒否権?ロシアにそんなサービスないよ、ウフッ」だろうか。
「ローナちゃん?馬鹿にしてる?」
「いやいやいや、無理だってなんでお前なんかにキスしないといけないんだよ」
「ひどいなー、ローナちゃんがいけないんだよ?」