第12章 до свидания 露
突然の言葉を理解するのに3秒。
何なんだ、急に。どうしたのだ。
「お、おう…俺も好き」
「ほんと?嬉しいな。でも、その好きとは違うかな」
「は?」
コイツはこんなにも難しい話をする奴だっただろうか。
連合として一緒にいた時間はそれほど短くは無かったはず。
なのにこんなにも話が読めないのは俺の勉強不足か?
“好き”にそれもあれも無いだろうに。
「…全然意味を理解してないよね」
そう察すると、無駄に大きなため息をつきやがった。
つか、俺そんなに顔に出てる?
「あのね、僕が言いたいのは…」
「へぶしっ…、あ、すいません」
「…」
「………」
ごめん、悪気はないんだよ。
なんか太陽が沈むこの時間帯は冷えるからさ、仕方ないじゃん?
だからただえさえ寒いのにそんな肝が冷えそうな笑い方しないで?
一応すいませんは言ったものの、イヴァンはいいよの“い”も発する事もなく、笑みを浮かべながら俺の方にジリジリ歩み寄ってきた。
逃げるために後ろに下がり続けて数歩目、背中は壁とくっついてしまった。
背中には壁、前方にはイヴァンという、世にもベタな展開。
逃げようにもきっとすぐに首根っこ掴まれるだろうしどうしたものか。
考えてる隙にすっかりイヴァンとの距離は縮まっていて、恐怖も何もかもがごっちゃになって汗が垂れた。
「僕が話してるっていうのに、クシャミするなんて…余程興味無いんだね?」
「い、いや…あれは自然現象だって」
「いやもなんもないよ、だって男の子には二言はないもんね?そうだよね?」
「うぐっ…」
性別というデリケートな部分に触れた話題にわざとらしく乗っかり、調子良く俺をいじる。
そっちは楽しそうだけどこっちは泣きたい。泣きそう。
「あれ、どうしたの?男の子なら素直に罪を認めないと。」
「だ、から…俺謝ったし」
「あんなので僕の機嫌収まったらライヴィスが泣く必要無いよ?」
確かに、もしかしたらもっと彼の身長は伸びてたかもしれない。そう考えるとバルト三国ってすげぇなって思った。
「あーもう…悪かったって」
「そんな謝り方で許すとでも?」
「ごめんなさーい…」
「僕の事なめてる?君の家半分はくれる勢いで謝ってくれないとプチってやっちゃうよ?」
「……」