第12章 до свидания 露
「あっ、ローナちゃんいた」
振り返ると声に似合わない図体のそいつが、俺に手を振りながら駆け寄ってきた。
息を切らしながらこちらにたどり着けばへへ、と目を細めて笑う。
「…ん」
そう無愛想に返事をする俺にも嫌な顔一つせずにここに来た理由をゆっくり話し始める。
話によると、世界会議をすっぽかした俺に帝国様は随分お怒りらしく、世界会議終了後に帝国様の命令で連合のみんなで俺を探し回っていた。
そんで探し回って数十分後、ただ今俺は連合の1人であるイヴァンに見つかったらしい。
別に良くね…、イギリス代表はイギリスである帝国様が出てるんだし、都市である俺が出る必要は何処にあるんだ。
まあそれは別にどうでもいい。
しかし、あのイヴァンが俺を探すなんて珍しい事もあるもんだ。
基本コイツは興味が無いことには無関心だし、俺みたいな面倒な性格の奴には声も掛けないはずなのに…どういう風の吹き回し?
「…なんか凄い失礼な事考えてない?」
「別に…」
「そ、ならいいけど。もし本当だったら呪ってたよ?」
微笑みながら悪気無く言うもんだから、より一層怖さが増す。
あの大国ロシア、ってだけで充分威圧感ハンパないのにこれ以上は勘弁してくれ。
「もー、ローナちゃん?はやくー」
「…あーおそロシア」
「ローナちゃんっ!いくよ?」
「いぎっ?!あ、ああ…」
いつまで経っても動く気配がない俺に痺れを切らしたイヴァンが、俺の手を引っ張って歩き出した。
コイツはそんなに辛抱強くないのかもしれない。
早めに移動したいがために急に手を繋がれたことにびっくりした。
が、それよりも
手袋越しでもわかる位にまるで人の温もりですらない位の手の冷たさに、小便ちびりそうだった。
しばらく歩いていると、人気の少ない薄暗い道に入った。
この辺りはどうも空気が淀んでいる、あまり居たくない。
そう思っていた矢先、イヴァンの足が止まったのに気づかずに広い背中に顔面からダイブした。
「うぶっ…ってぇ、いきなり止まんな」
「ねぇ、ローナちゃん」
「んぁ?」
ぶつかった拍子に負傷した鼻を擦りながら話を適当に聞いていると、イヴァンは思ってもいなかった予想外の言葉を口にした。
「僕ね、ローナちゃんの事が好きだよ」
「…は?」