第8章 Warmth Please 普
「あ、わり」
「いってぇな!! Imbecile !!vaffanculo!! 」
「あン?それはイタリア語だろ」
「あ」
あっ、やばい。 昨日ロヴィーノ達と飲んでた時に癖ついたんだ。
もちろんこの事についてはギルには了承取ってないし、なによりも同僚だとしても他の男と遊びに行くのはギルにとっては地雷なもんで。
「なんでイタリア語が出てくんだよ」
さっきまでの餓鬼のような騒がしさとは一変、獲物を捉える狼の様な目。
赤紫に吸い込まれそうになる。
「あっ、あれ、うちの会社にイタリア人がいるからー…」
「あぁ、知ってんぜ。」
「そいつのスラングが移ったのかもなー…」
苦し紛れの言い訳でも上手くいけばギルでも騙せる。
俺には三枚舌で有名な兄貴が付いてるからな!!
にしても視線が痛い。
「…そーかよ」
ほら、躾のなってる犬はしつこくないんだ。
ちゃんとご主人の言う事を従順に聞くいい子だから…
「なんて、…俺様がそんな嘘に騙されると思うか?」
「…あはっ」
そんなわけなかった(^q^)
思ったよ、こんなので騙されるタマなら今まで手を焼いてなかった。
なんだよ三枚舌って、死ね。眉毛しね。
「んで、説明してもらおうか 」
ジリジリとソファーの上で縮まる距離。
迷いは確実にギルの餌になる。
「まあ…言わなきゃ言わせるまで躾るけどな」
おそらく無意識で舌なめずりしている。
長くて赤い舌が俺を煽る。
(ッ…こんのドSめ)
狭いソファーでの激戦。もうツェッペリンでもビスマルクでもいいから砲撃でコイツをぶっぱなして欲しいものだ。
まあどんな戦艦や重巡でも俺んちの金剛に勝る子はいねぇと思うけど。
とにかく、コイツの隙をついて無事に床に足が付けば後は逃げるだけだから…、なんとか抜けなければ。
ニヤニヤニヨニヨしているギルに睨みをきかせながら頭の中で必死に作戦を立てていた、その時。
「ちぎー、ローナ?邪魔するぞ」
今日のこの時間、オフィスにいるはずの同僚の声。
(えっ…)
「あ?」
2人で似たような顔でフリーズしていると、リビングのドアが開かれた。
「飯作りに来てやった…ぞ、」