第28章 Pureness 西
自分の荒い怒声が部屋中に響き渡る。
驚いたトーニョがつり上がった緑色の目を見開き、硬直している。
これ以上言ったら後悔する、心ではわかっている筈なのに俺の口はこういう時だけ達者になって、止まらない。
「うるさいなぁ!!お前にはわからないんだ!!何も!!
いつも素直で明るくて、誰からにも好かれるお前には!!まるで真反対の俺の気持ちなんか…!!」
「ローナちゃん、」
「黙れ!!触んじゃねえ!!」
興奮している俺を落ち着かせようと、トーニョの手が方に触れる。
それすらも気に食わなくて力強く胸板を押して、寮から何も持たずに飛び出た。
途中呼び止める声が聞こえたけど、やっぱり無視して宛もなく走った。
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しばらくすると、風に乗った塩の香りが濃くなって来た。
荒れている息を少しずつ整えながら立ち止まりあたりを見渡すとどうやら海沿いまで来ていたみたいだ。
月が出ていないせいか、そこは真っ暗で少し怖かったりもする。
コンクリートで出来た波を止めるための塀を飛び越え、砂浜に近寄るとより一層塩と磯の香りが強まる。
汚れなど気にせずその場に座り、走ったせいで火照った体と心を冷ます。
「……」
後になって襲ってくる罪悪感に思わず大きなため息が出た。
まただ、またやってしまった。
なんでこうも俺の性格は可愛げがないのか。なんでこうもひねくれているのだろうか。
もっとフェリようにみんなから愛されるような性格になりたかった。
絶対アイツ怒ってるって…いや、怒ってるどころか呆れてるんだろうな…。
どうしよう、これから先トーニョの俺に対する態度が180°変わってたら…
もう寮抜け出すしかねぇじゃん。学園やめるしかねぇじゃん!!
てゆーか死ぬしかない
…ん?
「なんで俺、あいつに嫌われんのこんなに嫌がってんだ?」
いつもの俺なら他人の一人や二人に嫌われる事くらい痛くも痒くもないのに。
まあ…同じルームメイトだからか。
ちょっと違う気もするけど、その場はそうやってごまかした。
ふと腕時計をみると、デジタルの画面は午後9時を表していた。
いくら初夏だからとはいえ、汗で濡れたジャージは風のせいでひんやりと冷えて体の体温を低下させる。
当たり前だが、寒い。
それに加え…
「…ん?」