第28章 Pureness 西
鼻に何か当たった気がして天を見ると、また水滴が頬に落ちた。
そしてついに、多数の水滴がまるでバケツをひっくり返したかのように強まる。
それはまるで俺が生まれ育ったロンドンで死ぬほど見たことのあるような天候…
「It’s rain(雨かよ死ね)!!!」
どっかのスクールアイドルの堕天使も腹かかえて笑う程の不運にすぐ側にとまっている船を思い切り蹴飛ばした。
まじかよ聞いてねえよどういうことだよZ●P…。
とりあえず冷静になって雨宿りできる所を探している最中にも雨は空気を読む気もなくひどくなっていく一方である。
「なんだよここ海の家もねぇのかよ!!死ね!!」
そういえば本田が「ここら辺は随分田舎で住んでいる人もあまりいないんですよ…ちなみに怖い伝説もあったりします」なんて言ってた…気がする。
別に怖い話や都市伝説なんかはマジになって信じる方ではないが、俺だって女だ。心細くなったりもするわハゲ。
「あった…ってボロいな…」
浜辺の少し先を行くと人気のない少し…とはいえない結構年月が経っている和風の家が不気味なオーラを漂わせてたっていた。
まあ、この状況で入らないという選択肢はないわけだが。
お邪魔しますと一言言って、立付けの悪いスライド式の扉を開いて一歩踏み出した直後、
「…っ!?」
全身の力が抜けたような、それでいてまるで錘でもつけたかのような体の重さに襲われた。
耐えきれずその場に座り込む。
それが仇になったのか、その瞬間から俺の体に異変がおき始めた。
動悸、頭痛、悪寒、吐き気…終いには激しい耳鳴り。
風邪とは少し違う、まるで体がこの建物を拒絶しているような。
実を言えば、この症状に心当たりがない訳では無い。
うちの家は代々魔法や霊能力の血を受け継いでいて、父親側の親族や兄弟はみんな霊感もあるし魔法だって使えてしまうというなんとも不思議な家系なのだ。
そんなかんじで、俺も霊感は周りと比べて強い方だからこんな事になってしまってるというわけだ。
ちなみによく兄貴が使っている「ほあた☆」も魔法のひとつ。
しかし、家族の中でも比較的魔力や霊能力の強い俺がここまで取り憑かれそうになっていると言うことは相当タチの悪い悪霊が住み着いているようだ。