第4章 Vertrag 普
incubatorの高い声が、俺の体にまとわりついてるみたいで、イラつく。
それでもincubatorは喋り続けた。
「君に宣言したよね。俺は不死身だって。絶対戻ってくるって。約束は絶対守る彼だから、その約束を果たせないって悟った時、自分の不甲斐なさに絶望したんだ。」
俺が理由であいつは死んだのか?
そんなの、俺が殺したようなもんじゃないか。
あいつだって、わかってたはずなのに。
「あんまり驚かないんだね」
「…」
「そうだね…君なら、彼を生き返らせることも出来なくはないけど」
「…そんなの、やだ」
「そっか、残念だ。」
「だって、ギルは1人だから…生き返ってもなんかギルじゃないみたいで」
「理解出来ないね、それなら…
助けるって考えてみたらどうかな」
incubatorの考えることはイマイチわからない。
困惑した顔をしているらしく、incubatorが言い直す。
「僕は敗れたとは言ったけど、死んだとは一言も言ってないよ?
だから、助けるって言葉も間違ってはいないだろ?」
ああ、確かに。
どこか納得した。
「まあ…そうだけどさ」
「どうやら君には強力な魔力が秘められているみたいだ。さっきから君の近くに寄ると僕の体がはじき飛ばされそうになる。
どうかな、僕と契約してみない?ギルベルトを助けるって願いを叶える変わりに、君が魔女と戦う。彼も助けることが出来て、仇も取ることが出来る…一石二鳥じゃないか」
もう、あれだろう。拒否権は無いってことだろ。
こいつがハナから見えてるってことは魔法使いになれってことだろ。
考えてみればコイツが見えてる奴らは魔法使いになっていった。
兄貴、フラン、ロヴィーノ、フェリ、トーニョ、菊…それとギルベルト。他にもたくさん。
「え?僕が皆を殺したようなものなのにまだ犠牲を増やすのかって?
バカ言わないでよ、僕は契約しただけであって…殺した訳では無いんだよ? 死んでしまったのは彼らの運命で、彼らが望んだことなんだから。」
「…俺は…、
あいつを見つけ出して、助けたい。」
「よし、契約は成立だ。君の願いはエントロピーを凌駕した。
さあ、解き放って…君の力を」
瞬間、ジャスパーグリーンの光。
その光に目を眩ませながら、俺は何を願っていたのか。