第9章 クロ猫@黒尾鉄朗
「貴方を見てたら、思い出しちゃって…」
美心は俺を見ながら、つらつらと語り出した。
「好きな人が忙しくて、中々一緒に居られないの。
バレーの応援しなきゃ、って思った。だってあんなに頑張ってるんだもん。ちゃんと見てる。バレーやってる時のクロは、凄くカッコいい」
また、涙が零れた。
俺は小さく鳴いた。『すまん』と言いたかった。
「でも、やっぱりちょっと寂しくて……電話で話すだけじゃ、声を聴くだけじゃ足りない、って思うようになっちゃって…」
また、鳴いた。今度は少し大きく。
でも、言葉は見当たらなかった。
「話してない内に、クロが他の子を好きになっちゃったら…、私のことなんて忘れちゃってたらどうしよう、って思っちゃって……うっ、ひっく……」
大粒の涙が、俺の身体に落とされる。ポツポツ、ポツポツ、止まらない。
『すまん、だから泣くな』
俺の言う事はこれしかない。
だが、声が聞こえ出ない。
美心が俺のせいでこんなに苦しんでるのに…俺は慰める事も出来ないのかよ。
そんなの……!