第9章 クロ猫@黒尾鉄朗
声のする方を見てみると、そこには児童公園が在った。だが、中に子供は1人もいない。
…その、1人を除いて。
「ニャア」
『美心』…そう呼んだつもりだが、やはり今の俺にはお決まりの鳴き声しか出ない。
名前すらも呼んでやれないなんてな。…辛すぎる。
「…黒、ネコ?」
『黒』と呼ばれた時はビクッとしたが、今はネコなんだったと気づくと、ちょっとガッカリした。
だが、これはいい機会だ。久しぶりに美心ときちんと話せるチャンス。
俺は美心の膝の上に飛び乗った。当然普段は俺の方が重いから、こんな風に飛び乗ることは出来ない。なんだか新鮮だ。
「あらら…野良かな?綺麗な身なりね」
クスクスと笑って背中を撫でてくる。
そんな顔もするのか…可愛い。
俺は気持ちがよくて、尻尾を丸めてうずくまった。