第20章 甘えたさん@孤爪研磨
一緒にいられなくて、ひとりにして、ごめん。美心の背中に額をつける。言葉では表しきれない気持ちがこみ上げてきて、ぎゅう、なんて音が聞こえてきそうなくらい強めの力を込めてしまった。でも、それくらい…。
…しばらくして、パタン、本を閉じる音。
構ってくれるの?
「ごめんね、今いいところだったから」
おれが体を起こすと、美心はこちらを向いてにっこり微笑んだ。
おれはそんな美心の体に寄りかかってまた抱きしめた。
「なあに?今日は甘えたさんね」
クスクス、なんて笑いながら、おれの頭をポンポンと撫でてくれた。
おれより小さくて、細くて、温かい手。
おれを好きでいてくれていることがすごく分かる。表情、声色…ほんの些細なことだけど、そこには確かな愛情が込められている気がする。おれには分かる。
でも、美心はおれほど観察眼が鍛えられているわけではない。それに、愛情表現は多分…そんなにしてないから。
だから、きっと凄く不安にさせている。それに加えて、おれは今日…。