第3章 免許
安「バーベキューとかもええかもなぁ」
「でしょ?遠出とかさ?」
横「運転、代わりばんこで?」
「うん!」
村「それやったら今でもできるやん」
「できないよ!」
村「なんでや」
「だってわたし免許持ってないじゃん?」
錦「…ん?」
丸「あ、自分も運転したいってこと?」
「そう!だってみんなで行くのにわたしだけ運転できないって嫌じゃん?せっかくみんなでいるのに。わたしだけ運転しなかったら仲間はずれみたいで嫌やねん。それに、きついことはみんなで分け合いっこしよって約束したやん?」
霄の言葉に、メンバーが黙る。
そう、このグループで結成が決まってから、
デビュー前にもライヴをしていた。
その中で、やはり、男の子だらけの中に1人の女の子ということで批判が相次いだ。
批判の中でも、霄は負けることなく、歌い、踊り続けた。
しかし、ある日。
霄が泣き崩れている場面を安田が見つけた。
すぐにメンバーが集まり、話し合った。
メンバーそれぞれ、『霄と一緒にやってきたからこれからも一緒にやっていきたい』という気持ちがある反面、今まで一緒にやってきた仲間だからこそ、守ってやりたいという気持ちも強かった。
守るにはどうしてやったらいいか、グループから抜かした方がいいのか。
そんな話が出てきた時、横山が言った。
『もう悲しい気持ちも悔しい気持ちも隠さんでええ。泣きたい時は泣いたったらええ。無理していつも明るくおろうやなんて思わんでええ。
俺らグループやろ?いつだって霄の気持ち、聞いてやれるから。楽しい気持ち、悲しい気持ち、きついことやって、ぜーんぶ、みんなで分け合いっこしよや?』
「だからわたし、やるならぜーーんぶ、みんなと一緒にやりたい。」
そう言った霄の目は、あの時と変わらず、強い意思を宿し、曇りのない笑顔だった。
その笑顔に、反論するものは誰ひとりとしているはずがなかった。