第1章 Fall in Love!
そのとき長太郎が見たのは、珍しく無表情を崩した樺地と、いつに無く慌てた表情の日吉と、それから、天井の豪奢な電灯だった。
日吉が自分を呼ぶ、ほとんど叫び声のそれをバックに、長太郎の身体は宙に躍り出ていた。不注意で階段から足を踏み外したのである。
長太郎は、どんくさい自分を情けなく思った。氷帝テニス部のレギュラーという肩書きを背負っておきながら、注意不足で階段から落ちるなど、部の恥でしかない。敬愛する先輩である宍戸は、こんな自分を激ダサだと笑ってくれるだろうか。
走馬灯のようにそんなことを考えながら、長太郎は目を瞑り、床に激突する衝撃を予測して身体に力を入れた。