第1章 貴方が嫌い
綺麗に切り揃えられた前髪から覗く、灰色にも似た水色の瞳
それはしっかりと俺を捉えて……睨んでいた
変わんないな、半年くらいは経ってるだろうに……目線の高さすら変わんない
……それは俺自身の成長もあるせいか
「まーたフルネームだねぇ?呼びにくくない?」
「慣れたので、貴方の名前なんてそんな頻繁に呼びませんし」
「……あ、そう」
なんて可愛いげのない……と、そんなことこいつに求めても無駄かな
俺がこいつを嫌いなように、こいつも俺が嫌いなんだ
その理由は、未だに知らないけど……
止めるために掴んだ手を離し、からかうように告げる
「でもまぁ、久しぶりの再会なわけだし……甘い台詞でも掛けてあげようか?」
「わぁ、全然嬉しくない……ご遠慮願いまーす」
ブブー!という効果音が付きそうな両手でバツを作るポーズで嫌そうに顔を歪める
……こういうところは中学生なわけだ
「というか、貴方が私に甘い台詞?冗談でも言いたくないでしょ」
「なるほど、同感だ。でも……雪乃をどん底まで落とせるならやれるかもね」
「最悪ですね。何度も繰り返すようで悪いですけれど…………」
基本的な皮肉口調は敬語、それからいつものお決まりの変わらぬ五文字……
「私は"貴方が嫌い"なので、絶対に無理ですよ」
敬語じゃなかったときでも、表情が不機嫌じゃなかったときでも……この五文字だけは出会った当初から変わらなかった
だから俺も何でか対抗心ができたわけで……
「ほんと、言われなくても俺もあんたが嫌いだよ」
いつものような日常が始まってしまうんだ