第4章 真似っこミステリー
「すごかったねぇ、渚ー」
「うん、うまくできて良かったよ」
いつも通り笑う彼に、私はにっこりと返す
私が笑顔じゃないときの方が、最近は少ないのだが……
笑顔にも種類はあるから
「鷹岡先生のような先生は……お断りだな。痛いのって、好きじゃないし」
「頬っぺ大丈夫?やっぱり痛かったんじゃ……」
「あは、腫れてなきゃいいよ。私は別に誰かになりたい訳じゃないの。この体は親からの贈り物だからね」
胸に手を当て、瞳を細める
「……私はステータスが欲しいの。割り振りは全部賢さで。私は皆から経験値を貰うんだ」
そう、それが私
私が私である最大の武器だ
そして……
もらった経験値は倍で魅せてあげる
「不思議だよ。間宮さんが言うとなんでもその通りになるし。盗まれても恨めないや」
「ミステリー……ってね。私得意なんだ……そういうの。疲れなんて、私には関係ないの」
疲れすら、自分でわからなくなるくらい……真似るのが上手いんだ
だからそうだ
私の疲れはきっと拭う方法があるけれど……
今じゃなくても良い気がする
今だとまだ皆に追い付けない
私はあの人を要にしちゃダメ
もう……迷惑は、誰にもかけたくないな
それに、私のこのもやっとしたのは疲れだけじゃない
気づいたらいけないものがある
だから、我慢
あの人は、我慢
私は、まだ……
それの重要性を知らなかった