第13章 私だけにみせる表情(カオ)【諏訪怜治】
怜治「菜々海。」
怜治に呼ばれ振り返る。
怜治の後ろには夕陽が輝いていた。
そして、海に反射するオレンジの光。
オレンジから群青、黒へとグラデーションの空。
菜々海「れい、じ…。」
怜治「菜々海…。」
怜治の手が私の頬を包む。
優しい表情(かお)。
あぁ。
私だけに見せてくれる顔だ。
そして、だんだんと顔が近づく。
最初はおでこ。
おでこが離れて鼻がくっつく。
鼻が離れる。
菜々海「れ、い…んっ…。」
名前を呼ぶ前に唇が塞がれた。
怜治の唇だ。
瞳を閉じる。
もう少し、もう少しだけでいいからこのままでいさせて。
唇が離れる。
また、あの優しい表情だ。
この顔は私しか知らない顔。
怜治、大好き。
言葉じゃ表せないくらい好き。
菜々海「怜治、大好き。」
怜治が目を見開いた。
菜々海「怜治?」
怜治「俺は…。俺は、愛してる。」
菜々海「!?バカ…。」
お互いの体温を確かめるように抱き合い、触れるだけのキスをした。
そして、2人で微笑んだ。
END