第5章 日常②。
ようやく大地さんのお説教から解放された頃には、いつの間に降りだしたのか、すっかり雨だった。
『降ってるし…』
カサって実は意外とお荷物になる。だから私は折りたたみのカサを携帯してる。軽くてコンパクトだもんね。だから梅雨時でもそれで済ませてるんだけど…
『あれ?おっかしいな…』
いつも入れてあるリュックの外ポッケを探すけど水玉模様のカサは見つからない。ちょっぴり期待して他も探すけど、なし。
どうしよう…カサ、ないや。
急に不安になって空を仰。雨の勢いは弱まるどころか、むしろ強くすらなっている。これじゃあ当分止みそうにない。
そうだ、兄さん!
兄さんなら車も持ってるし、迎えに来てくれるかも。淡い期待を持って、電話をかけようとスマホをいじる。次の瞬間、私の期待はガラスのように粉々に砕け散った。
"出張で青森にいってきまーす。数日は戻らないから戸締まりには気をつけるんだぞ!"
新着メールの一番上には兄さんからのメール。それ自体は問題じゃないんだけど内容が大問題。宮城にいないじゃんか!
いってきまーす、じゃないよ!肝心なときに役に立たないんだから…←
誰かに借りればいいんだ!
でも待って。怒られている間にみんな帰ったんじゃん!月島くんと山口くんだって、解放されるとさっさと帰っているし、残っているのは私くらいだ。
うう…どうしよ、本当にどうしよう!
びしょ濡れ覚悟で走って帰る?
でもそれだと風邪、ひきそうだな…
体育館の扉の前で一人うんうん唸っていると、誰かに声をかけられた。
「おい、朱里帰らねーのか?」
『ひゃあっ!』
びっくりして数㎝飛び上がって後ろを向くと、さっきまで口喧嘩をしていた影山くんが怪訝そうに立っていた。