第5章 日常②。
ちょうどスガさんが部室から出てきたところだったので、声をかけてみた。
『スガさん、影山くん見ませんでしたか?』
「影山ならまだ部室にいるけど」
『そうですか、ありがとうございます!』
「暗いから気をつけて帰れよ~」
また明日、とスガさんは手を振って帰っていった。暗くなったからと優しく心配してくれるとは…兄さんと交換したいな←
『影山くん、いる?』
何の前触れも無しにドアを開けると…
「アカリッ!?」
「なっ///」
翔ちゃん、影山くん、その他もろもろ、みなさんお着替え中でした。普通の女子ならキャー!とかってかわいい反応するんだろうけど。
私?するわけないじゃん。
『ああ、失礼しました。でも初めてじゃないわけだし、いいよね?』
「まあ、そうだな…」
淡々と答える私に、影山くんが珍しく歯切れが悪そうだった。
『なんかあった?』
「普通の女子なら叫ぶのかと…」
ああ、そういうことか。つまり、影山くんは私が普通の女子じゃないと言うわけだな。
『だって、ただ上半身に何も着てないだけじゃん。それに、兄さんがお風呂上がりとかでも腰にタオル巻いて普通にうろうろしてるから。見慣れた?のかも』
(それを普通じゃないって言うんだよ!)
影山くんが心で叫んでいるのも知らずに、私は部屋の中央のテーブルをあさった。月バリやらタオルやらごちゃごちゃなので、目当てのも物を探すのには少し時間がかかった。
『あった!』
私の手には、一冊の本。この前読んでいた本の続編で、部室に置き忘れていたのだ。影山くんに用事があるのも事実だけど、この本もついでに取りに来たわけ。
「なんだ、本か」
『なんでガッカリしてるの?』
「王様は朱里が覗きに来たかと思ったんじゃないの?」
影山くんへの質問に答えたのは、なんと月島くんだった。