第5章 日常②。
6月のとある日。気象庁から東北南部の梅雨入りの発表があったのは数日前のこと。それからというもの、雨や曇りなどすっきりしない天気が続いている。今日も曇っているけどこれから夜にかけて雨が降る予報だった。
「もってこーい!」
「ブロック二枚!」
でも、烏野高校の第二体育館で活動中の部員はそんな天気などお構い無しのようで。春高に向けて、練習を重ねる。今は六人ずつに分けてのチーム戦。
Aチームが勝ったところで、烏養コーチが休憩の指示を出した。わらわらと潔子さんと私の周りに部員が集まる。
『大地さんタオルどうぞです!翔ちゃんこれドリンク!』
「冷やしてあるのか、気が利くな!」
「サンキュー!」
『いえ!潔子さんがその方がいいと…』
「影山、はい」
「アザッス!」
いつものようにぐったりと疲れたみんなに冷やしたタオルやドリンクを渡す。俺もー!と手を伸ばしてきた西谷先輩にドリンクを渡して、潔子さんからタオルを受け取った影山くんをちらりと窺った。
とくに変わった様子は無い。
よし、部活が終わったら頼もう。
実は影山くんに頼みごとがあって、それを言う機会を探っていた。部活、早く終わんないかな。コーチに用事があるから今日はここまでで、とかにならないかな…私の願いも虚しくいつも通りに部活は続き終わったのは7時を回った頃だった。