第4章 インターハイ予選。
スガさんが手招きしてくれたので、駆け寄る。三人の周りにはお昼ご飯とおぼしきパンやおにぎりがビニール袋に入って無造作に置かれている。
『こんにちは、みなさんもお昼ですか?』
「ま、そんなとこだな」
「朱里ちゃんもお昼?」
『はい。友だちが飲み物買いに行ってるんですけどね』
「そっかー」
初夏の日差しが照らす中、私たちはお昼ご飯を食べた。ちなみに、ユキちゃんはまだ戻ってこないので、失礼して先に食べている。
今日の卵焼き、ちょっとしょっぱいかも。お醤油入れすぎたかな…余談だけど、うちの卵焼きはしょっぱめ。甘口のおうちもあるらしいけど。
『あの、ちょっといいですか?』
最後の一口を食べ、お弁当箱を片付けてから、ずっと気になっていたことを訊いた。
「ん、ろーひは?」
「スガ…口の中空になってから話せよ…」
大地さんに注意され、おにぎりを頬張っていたスガさんはごくりとお茶を喉に流し込んだ。
「よし。それで、どーした?」
『みなさん…これからどうするんですか?』
これから…
インハイが終わって3年生の中には部活を引退する人もちらほら出てくる。昨日家に帰ってから、そのことをずっと考えていたのだ。
大地さんたちは、残るのだろうか?
不安な私に、スガさんはいつもみたいにニカッと笑った。
「もちろん、残るに決まってるべ!」
「ああ!」
「まだバレーしてたいしな」
『っ!ほ、本当ですか!?よかったぁ~』
三人の笑顔にすっかり安心した。よかった、またみんなのバレーが見れるんだ。
『じゃあ、翔ちゃんとか影山くんたちにも教えてきますね!』
「おう!」
お弁当箱を急いで手提げバッグに詰め、水筒も入れる。三人にペコリとお辞儀をしてドアに向かった。
「はぁ、はぁ…やっと着いたぁ。あれ、アカリ?ちょっとどこ行くのよぉ」
『ごめんユキちゃん!用事できたー!』
「ええ!お昼はぁ?」
『先食べちゃったから!』
「えー!」
階段を一段抜かしで降りる私の背中に、ユキちゃんの不満気な声が届くけど構うもんか。早く教えてあげたいんだもん!最後の一段を飛び降りる。
私は迷わず第二体育館に走った。