第4章 インターハイ予選。
その後の二時間もぼけーっとして過ごしていたみたいで、気づけばお昼休みだった。
「ツッキー、お昼食べよー!」
「山口うるさい」
「ゴメン、ツッキー!」
いつもの光景を、やっぱりぼけーっとして見ていたら、誰かにトントンと肩を叩かれた。振り向くとニヤニヤ笑うユキちゃんだった。
ユキちゃんは数少ない女の子の友達で、いっつも私のことを気にかけてくれている。茶色に染められた髪は、性格をそっくりうつしたように明るい。今日の髪型は編み込みのポニーテール。
「アカリ~、君はだぁれを見ているのかなぁ?山口くん?それとも…月島くん!?」
『なっ///違うから!二人はそういうんじゃなくてっ!』
「えぇー、ますます怪しいんだけどっ」
『もういいから!それより、ほらっお昼!』
尚も訊いてくるユキちゃんをなんとかごまかして、いつもの屋上に行った。
「今日のお弁当なぁに?」
『昨日の晩ご飯の炊き込みご飯が余ってたから、それ。あとは卵焼きとかタコさんウィンナーとか…』
「毎回思うんだけどさ、細かいよねぇ、アカリのお弁当って。コンビニパンの私とは差があるよ」
『兄さんがお弁当だからね、まとめて作った方が楽なんだよ。一人分作るのって意外と面倒なんだよ~』
「うおぉぉぉ…せ、台詞が眩しい…」
『はぁ?何してるのさ』
目を両手で覆ってオーバーアクションをとるユキちゃんがおかしくて、クスリと笑った。屋上への階段を登りながらお弁当雑談をしていると、ユキちゃんがあっ!と叫んだ。
「飲み物買ってくるから先行っててぇ~!」
登ってきた階段をパタパタ降りていくユキちゃん。
『転ばないでね…って、あ…』
「イテッ!」
言ったそばから段差につまづくユキちゃん。無事に屋上まで戻ってこれるか、少し心配になった。
仕方がないので一人で屋上に行くと、そこには先客がいた。
『大地さん、スガさん、旭さん!』
「ん?」
「おっ、朱里ちゃん!」
手摺にもたれていた三人は、私に気づくと手を振ってくれた。