第4章 インターハイ予選。
「ふぅん、山口って盗み見が趣味なんだ」
「えっ、違うよ!二人とも遅いから様子を見に来たんだけど…」
『心配かけてごめんね、すぐ戻るから』
意地悪く笑った月島くんに、弁解する山口くんが妙で、クスクス笑った。
月島くんは僕は戻るから、とスタスタ歩き出した。その後を慌てて山口くんが追う。
『ちょっとぉ、か弱い女子を置いてかないでよ~!』
「朱里は大丈夫デショ。だってゴリラだし…」
「ツッキー!朱里ちゃんに失礼で…」
『だから!ゴリラに失礼だってば!』
「え、そっちなの!?」
飄々と返した月島くんにギョッとして驚く山口くん。"おすわり"を出ると、もうみんなが乗り終わった後だった。
「アカリーっ、早くー!」
『翔ちゃーん、今行くよー!』
窓から身を乗り出して呼んだ翔ちゃんに負けないくらいの声で、返事をした。
『お待たせしました~!』
パタパタとバスに乗り込んで、当然のように潔子さんの隣に座った。もう西谷先輩と田中先輩の視線には、慣れました←
バスに揺られながら翔ちゃんの顔をちらと窺うと、憑き物でもとれたようなスッキリとした笑顔で影山くんと口論していた。
そのことにホッとした。規則正しいバスの振動に、少しずつ瞼が重たくなってきた。そして、いつの間にか眠っていた。
………潔子さんの肩をお借りして。
学校に着いたとき、2年生の二人に頭を叩かれたのは、言うまでもない。