第4章 インターハイ予選。
「…怒ったり泣いたり、忙しい人」
月島くんはそう言って、口許を僅かに綻ばせた。普段笑わない人が笑うとかわいいよ、って前にユキちゃんが言ってた。
月島くんは、かわいい…のかな?
顔いっぱいに翔ちゃんみたいな全開スマイルを浮かべた月島くんを想像して、不覚にも笑ってしまった。
「今度は笑うんだ。本当に忙しいネ」
『ふふふっ…』
どこか呆れたような物言いに、また笑う。
『あのさ、さっきはあんな風に言ってごめんね。兄さんが来たときも言ったでしょ?私って口を開けば屁理屈だらけなの』
「別に…言ってた通りじゃない?」
僕の方がおかしいのかもね。
小声で言った月島くんに、罪悪感が湧いた。
「そんな顔しないでよ。僕が悪者みたいじゃん」
『え、私どんな顔してた…?』
「この世の終わり」
『ちょ、それは言い過ぎだよ!』
真面目な顔で言い切った月島くんの肩を小突いた。月島くんはわざとらしくしかめ面をして、私の手を押し退けた。
「やめて、痛いから」
『絶対痛くないからっ!すごい弱気だもん』
「朱里の弱気はゴリラ並み」
『ひどい!ゴリラに謝ってよ!』
「え、そっち?」
二人でわちゃわちゃやってると、向こうから山口くんがヒョッコリ覗いてた。
もしかして、見ていらっしゃったとか?