第4章 インターハイ予選。
私の姿を目に留めた月島くんはため息を一つ吐いた。
「ただのトイレなのに遅くない?みんな心配してるけど」
『…っ、じょ、女子はイロイロあるの!』
何てデリカシーの無い一言!
私が憤慨していると、月島くんは思い出したように付け加えた。
「気になったんだけどさ、何で、試合にも出てないのに泣いてたワケ?」
一瞬、何を言われたのか解らなかった。
ナンデ、シアイニモデテナイノニ
ナイテタワケ?
そんな無神経な言葉にカチンとしつつ、質問の回答を考えた。
『何でって…みんなが負けたのが悔しかったからでしょ。あれだけ頑張って練習してたのに。それに、最後の速攻だって、全部カンペキだったし』
だから悔しいんだよ、と締め括ると、月島くんは不思議そうな顔をしてまたもや訊いてきた。
「だからさ、何でマネージャーなのに泣いてたの?」
マネージャーなのに…
マネージャー
なのに?
もう、完全にキレた。
『そうですか、ああそうですか。じゃあ言わせてもらいますけどねぇ、貴方の方がよっぽど変ですよ?試合に出て、レギュラーで頑張ってたくせに泣きもしないで…』
一気に捲し立てる私に、月島くんは呆気にとられてた。
そのとき、試合後のみんなの姿を思い出した。茫然と立ち尽くしていて、頭の理解が追い付かなくて。
本当は、スガさんだって出たかったのに。
何で、貴方が出てたのよ…
ベンチ横で俯いていたスガさんの後ろ姿を思い出して、視界がじわりと滲んだ。でも、視線は真っ直ぐ前、月島くんを捉えている。
私はきっと、ひねくれた顔をしている。
嫌いだ。
こんな言い方しか、
こんな考え方しか出来ない、
自分が、嫌いだ。
吐き気がする程、嫌いだ。
この性格のせいで、
同じようなことを繰り返したのに。
仲違いを何度もしたのに。
また、
やってしまった。
せっかく仲良くなれたのに。
そう思っていたのは私だけだとしても、
やっぱり哀しかった。
決して顔を下げまいとしている私の目から一筋の雫が頬を伝った。