第4章 インターハイ予選。
荷物を持ってバスに乗った。バスの中は嗚咽が響いていた。バスが止まったのは居酒屋"おすわり"の前だった。
烏養コーチがご馳走してくれるらしい。そしてテーブルの前に座り、誰からともなく食べ出した。
「走ったり跳んだり、ましてや試合後の筋繊維はブッチブチだ」
烏養コーチが言った。
「それを飯食って修復する。そうやって筋肉がつく。そうやって強くなる。食え、少しずつ、でも確実に―」
強くなれ―
そのエールとも、労いともとれる言葉に、みんなの目から再び涙が溢れた。涙と鼻水とでぐちゃぐちゃの顔で、それでもご飯を口一杯に掻き込んで。
縁下先輩と月島くんは泣いていなかった。
3年生は当然ながら号泣だった。
西谷先輩も、田中先輩も。
影山くんも、山口くんも、
翔ちゃんも。
貰い泣き、って言うのかなぁ。私の目からもポロポロ涙が零れた。
『うくっ…ふぇ…ぐ…っ』
みっともないけど、悔しかった。でも一番はあれだけ練習していたみんななんだ。
鼻を啜る音と嗚咽の中で、敗戦の味を噛み締めながら強くなるために夢中で箸を進めた。
『すみません、ちょっとお手洗いに…』
食べ終わる人がちらほら出てきた頃、私はトイレに向かった。トイレをしたかった訳じゃなくて、なんか一人になりたかった。ふと鏡を見てちょっとびっくりした。
そろそろ戻ろうかなぁ、と思ってトイレをでた。
『…あっ…』
「あ…」
月島くんと鉢合わせした。
何で今!?