第4章 インターハイ予選。
ウソ…でしょ…?
何で…
何でボールが床を転がってるの?
何で烏野のコートに転がってるの?
目の前で起こったことが信じられなくて、思わず目を背けた。環になって喜ぶ青城の人たちと愕然とした表情で膝をつくみんなの姿が脳裏に焼き付いて離れなかった。
そのとき、誰に向けての言葉かわからないけど滝ノ上さんがポツリと呟いた。
「負けたときにさ、"いい試合だったよ"って言われんのが一番嫌いだったよ。でもいざ目の前で負けたやつらに言う言葉ってさ、それしか考えつかねぇんだよな…」
その一言一言が胸に刺さった。
そっか
負けちゃったんだ。
その事実だけがすとん…と胸の中に落ちてきた。涙ながらに整列して礼をするみんなをぼんやりと眺めて、体育館の入り口で合流した。
今にも零れそうな涙を堪えていたけど、翔ちゃんの顔を見たらもう、無理だった。涙腺が崩壊するのには、そう時間はかからなかった。私の頬には、いつの間に流れたのか、幾筋も涙の跡があった。
一歩ずつ翔ちゃんに近付いて、それから何も言わずに翔ちゃんをギュッと抱きしめた。翔ちゃんは私の肩口に顔を埋めて、嗚咽をもらした。
「うっ…く…うぅ…っく…」
そんな翔ちゃんを私はただ、抱きしめた。背中をさすって頭を撫でて。
何て言っていいか、わかんなかった。
何て言われたいか、わかんなかった。