第1章 プロローグ。
第二体育館まで案内してくれた二人は着替えがあるから、と先程別れた。
体育館の中からは掛け声やボールが弾む音が聞こえてくる。
翔ちゃん、いるかなぁ?
カラカラとドアを開けると、黒髪の男の子とオレンジ頭の男の子がパスの練習をしているところだった。
ああ、
やっぱりだ。
『翔ちゃん…』
私は自分にしか聞こえないくらい小さい声で呟いた。
私に気付かない二人は尚も練習を続ける。しばらくボールが二人の間を飛んでいたがミスが出てしまい、ボールが明後日の方向に飛んでいってしまった。
それを取りに行った翔ちゃんがアンダーで黒髪の男の子に返そうとしたが、それは私の方に飛んできた。
「影山ごめん!」
「日向ボゲェ!って、お前よけろっ!」
黒髪の男の子が私に向かって叫んでいるが、私は動かなかった。
シュルシュルと飛んでくるボール。
私は手をアンダーに構えた。
ああ、懐かしい。
ボールを待つこの感じ、この感覚。
たったの二ヶ月しかバレーから離れていないハズなのに。
こんなにも懐かしい。
落ちてきたボールを、私はアンダーで上に上げた。