第4章 インターハイ予選。
徹さんがトスを上げ、助走をする。そして高く踏み切って、腕を鞭みたいにしならせてのジャンプサーブ。それを西谷先輩が拾った。
『うひゃ~、徹さんこの局面でサイドラインぎりっぎりの強打!』
この場面でここまで強気に攻められるのも一種の才能かも。そしてなんとか烏野が攻めきって、ドタバタの2セット目は青城23-烏野25で烏野が獲った。
セットの合間の休憩時間。翔ちゃんを見ながらふと、昔のことを思い出した。
私がまだ、東京に住んでいた頃。私が中学生1年生にばかりのとき。クロと研磨が練習試合に出ると言うので、応援しに行ったときのこと。
普段は無口で無表情、無気力な研磨が、どこか楽しそうだったのだ。私はそのことにひどく驚いたのを覚えている。その顔は、新しいゲームの発売日に見せる、あの早くやりたくて堪らなさそうな、そんな顔だった。
試合中に見せる翔ちゃんの顔は、あのときの研磨そのものだった。研磨そのもの、というのは少し違うかもしれない。だって翔ちゃんのには、飢えたカラスのようなのが感じられるから。
ホイッスルの音にハッとする。運命の最終セットが始まっていた。