第4章 インターハイ予選。
『徹さん!貴方っていう人は、一体なんなんですかっ!』
物凄い剣幕で怒鳴る私をものともせず、徹さんはボール片手に飄々と言った。くそう…あの余裕が腹立たしいことこの上ない。
「いやーカワイイ子の応援があれば、俺も無敵だからね☆」
でたよ、うへぺろ☆。
イラッときた私はコートにいる翔ちゃんたちに届くくらい大きな声で叫んだ。
『みんなあぁ!あの茶髪の勘違いセッターさんぼっこぼこにしてえぇ!じゃないと、私のプライドが許さないっ!』
支離滅裂でめちゃくちゃな主張。それでもみんなは笑ってくれた。翔ちゃんはニカッとブイサインで。影山くんはいつもの不敵な笑みで。月島くんは僅かに口角を上げて。よかった、意味は伝わったみたい。
黄色い声を飛ばしていた女子曰く、
「なんなのあの言い方、許せない!」
コート内の岩泉さん曰く、
「アイツ、よく言ったな、あんなこと」
コート内の花巻さんと松川さん曰く、
「それな。俺も同感」
コート内の1年生二人曰く、
「及川さんなんかスゲー!」
「………」
私の爆弾発言によって青城サイドは荒れに荒れているようだ。ええい、どうにでもなれ!
そして、試合開始のホイッスルが鳴った。
「逃がした獲物は大きかったかな…」
整列に向かう徹さんの呟きは誰の耳にも届くことなく、歓声に呑み込まれていった。