第1章 プロローグ。
「山口、煩いから静かにして」
「ツッキー、俺ほんとに探したんだからね…ってあれ、日向さん?」
ソバカスくんは何故だか私の名前を知っていた。そういえばどこかで会ったかな?と思考を巡らせてみれば思い当たる人が一人いる。
私の記憶違いでなければ、同じクラスに彼によく似た男の子がいた。その男の子も月島くんのことをツッキーと呼んでいた。
『えっと、間違えてたらごめん。同じクラスの山口くん…だよね?』
山口くん(仮)は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに私の方に駆け寄ってきた。
「俺の名前、覚えててくれたの!?」
『教室でも月島くんのことツッキーって呼んでたよね?もしかしたらと思ったんだけど』
そっか!と山口くんは納得の表情を浮かべた。山口くんは山口忠というらしい。月島くんとは仲が良くて、部活も同じバレー部に入っているらしい。他にも月島くんのことをあれこれ教えてくれた。
その流れでお互いに自己紹介的なことをしていると、月島くんの一言が聞こえた。
「山口あのさ、人の個人情報を勝手にベラベラ喋るのはどうかと思うけど?」
少し棘のある言い方に、私は苛っとした。
『そんな言い方しなくてもいいんじゃ?』
「部外者が話に入んないでくれる?」
『友だちに対する口のききかたが冷たい人には言われたくない』
「えっ、ちょっ、ツッキー!日向さん!」
一触即発のまさにその時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。