第4章 インターハイ予選。
及川さ…じゃなかった、徹さんたち青城の人と別れた後、私は翔ちゃんたちの元を目指し、廊下や階段を風のように走り抜けた。
今はただ、勝利を自らの力で手に入れた翔ちゃんを、みんなを祝福したかった。
何度目かの角を曲がったとき、真っ黒な烏色のジャージを身に纏った一団が目に入った。
『翔ちゃんっ!』
「アカリ~っ!」
私に気付いた翔ちゃんが試合の後とは思えないスピードで向かってくる。そして、互いの手を取り兎みたいにぴょんぴょん跳ねた。
『スゴいよ、スゴいじゃん!初戦突破!!』
「俺、勝ったよ…勝ったよー!!!」
ああ、そうか。
翔ちゃんは勝利に飢えた烏だったのか。
"勝った"という事実、それはすなわち、この先もコートに立てるということ。今まで敗北を味わい続けてきた翔ちゃんにとっては、素晴らしいご馳走だろう。
それはみんな同じ訳で。翔ちゃんの後ろに控えるみんなからは、喜びがありありと伝わってきた。
だから、私は自分が出来る限り一番の笑顔で言うんだ。
『初戦突破、おめでとう。みんなすっごいカッコよかった!』