第4章 インターハイ予選。
なんとなーく流れでこうなってしまったが、現在私の右隣には及川さんが座っている。そしてその及川さんを牽制するかのように左に陣取るのは、"岩ちゃん"改め岩泉さん。
二人は中学時代の影山くんの先輩なんだとか。他にも元チームメイトの国見くんや金田一くん、3年の花巻さんや松川さんなんかがいて、彼等は青城のスタメン。
影山くんのいた北川第一中学の生徒の殆どは青城に行くらしいが、受験で落ちた影山くんは烏野に来たんだとか。
そんなこんなでよく分からないけど青城の人たちと烏野の初戦を観ることになった。
常波との試合は1セット目を12-25で烏野が取っている。2セット目が始まった今でも烏野は優勢のままだ。
『翔ちゃん調子良いなぁ…トスも…でも月島くん合わせにくそう…やっぱりダメかぁ…』
ぶつぶつ言いながらリュックからノートを取り出しシャーペンを走らせる。瞬く間にページが文字で埋まる。青城の人が周りにいるけど構うもんか。及川さんが覗いてくるけど機密情報なんてないもんねぇ。
『よっし、ブレイク…っ!』
田中先輩のレフトからのアタックで烏野がブレイクする。点差は開く一方だ。そのこともノートに書き留める。
「ねぇ、朱里ちゃんさっきから何をせっせと書いてるの?」
『観客席からなんで分かりにくいんですけど、誰がどんな攻撃で何点目を獲ったかとかサーブの成功率とか…選手の特徴…とか?』
う~んと及川さんが唸るように呟いた。そして私のことを真剣な面持ちで見つめ、こう言った。
「朱里ちゃんさぁ、今からでもウチ来ない?」
………はっ…?