第4章 インターハイ予選。
最前列に座ると、近くには他の高校の人が陣取っていた。中でも一際目を引くのは白とミントグリーンのジャージに身を包んだ一団。そしてその中心の人、横顔しか見えないけど、どこかで見た気がするんだよなぁ…
試合が始まっているのにも関わらず、私はじぃっとその人を食い入るように見つめた。視線に気づいたその人が振り向く。正面から見て分かった。
『あっ!"月バリ"の人だっ!!』
「何々、俺のこと知ってるの?岩ちゃん聞いた?」
「ああ!?うるせーよクソ川が!」
「ヒドい!」
"月バリの人"の頭を"岩ちゃん"がスパーンとひっぱたく。今思い出したけど、この人たち確かシード校の青葉城西高校なんだ。叩かれた頭を擦りながら、"月バリの人"が話し掛けてきた。
「で、君は俺のファンの子とか?」
『いえ、そういうわけではないんですけど…ただ、青葉城西といったら県内でもトップクラスの高校ですし。あんなにまじまじと見ちゃって…不躾でしたよね、すいません』
「ハハッ、気にしないよ。俺は及川徹。主将でセッターやってるんだけど、君は?」
『烏野高校排球部マネージャー1年、日向朱里です。あの、及川さんって影山くんの先輩…ですか?』
私の口から出た"影山くん"という言葉に及川さんはビクリと反応した。
「朱里ちゃんってもしかしてトビオの彼女とか?」
ニヤニヤしながら訊ねてくる及川さん。こういうときってどう返答すればいいんだろ…
私が挙動不審になってオドオドしていると、及川さんからあいてっ!と聞こえた。
「ったく、困ってんだろーが。悪ぃな」
また叩かれたみたいで叩いたのはやっぱり"岩ちゃん"だった。