第4章 インターハイ予選。
「影山ナイッサー!」
「サッコーイッ!」
ボールが弾む音、部員の掛け声。夕陽の照らす第二体育館で排球部は練習中。今は部員をAチームとBチームに分けての練習試合をしている。ちょうど影山くんがサーブを打つところ。
私と潔子さんはドリンクの用意をしながら先日行われた壮行式の話をしていた。
『まさかあんなことするなんて。本当にびっくりしましたね』
「そうだね。みんなこっそり準備してたみたいだし、一番驚いたのは大地じゃないかな」
『でも何かいいなぁって思いました。後輩たちに応援されて、大地さんも嬉しかったと思います』
「うん。私たちにはこれが最後のインハイだからね」
潔子さんは一言一言噛み締めるように言った。"最後"のインハイ。それはつまり"次"がないということ。3年生には笑っても泣いてもこれが最後になってしまう。
試合に目を遣るとサーブ権が翔ちゃんに回ってきたところだった。翔ちゃんは息を整えてトスをあげる。
今まで苦い思いをしてきた3年生の為にも翔ちゃんたちには絶対に勝ってほしい。
『翔ちゃん、ナイッサー!』
私はそんな思いを込めて翔ちゃんに声援を送った。
―――インハイ初戦まで
あと二日。