第4章 インターハイ予選。
全国高等学校総合体育大会バレーボール大会、通称"インターハイ"。その宮城県予選が遂に始まろうとしていた。
『烏野の初戦の相手は…常波高校かぁ』
私は数日後に控えたインハイ初戦に向けて情報を集めていた。"月バリ"と烏養コーチに貰ったトーナメント表を右手に、左手にはおにぎりを持って、屋上でお昼中なのです。因みにおにぎりは鮭わかめ。美味しいんだなぁ、これが。
『初戦の相手としてはまずまずかな。強すぎずかつ、弱すぎず。肩慣らしにはいいかも』
私は頬張ったおにぎりをモグモグと咀嚼しながらインハイのこと、じゃなくて明日の予定を考えていた。
兄さんがこっちに転勤になってから、翔ちゃんの家ではなく駅近くのマンションに住むことになった。念願の一人暮らし、ではなく残念ながら兄さんもいるが…
私も兄さんも朝が早いので、お弁当も作るとなると大変である。5時起きして二人分のお弁当を作って、それから朝練。幸いにしてマンションが学校から自転車で10分だからよかったものの、遠かったら何時に起きなければいけなかったことか。
明日は早目に部活終わるかな。流石に初戦を翌日に控えているので、放課後は練習を少な目にするだろう。
『よしっ、明日は早く寝よっ!』
ごくりとおにぎりを飲み込んで、自販機で買った"午後ティー"を喉に流し込む。ついでに言うと私はミルクティーではなく、レモンティー派だ。
っと、そんなことはどうでもいい。
今大事なのはインハイのことだ。半分に折ったトーナメント表を月バリに挟んで、お弁当箱と空になったペットボトルを手に、私は屋上を後にした。
昼休みの終わりを告げるチャイムが晴れ渡った空に響いた。