第3章 日常①。
「青司にいってまだバレーやってる?」
『うん。東京で地元のバレーチームに入ってたけど、重宝されてたらしいよ。背も高いからかな~、あの人』
兄さんは185㎝くらいあるから、大きい部類に入るだろう。影山くんよりは大きいけど月島くんには敵わないかな。
「じゃあ、そろそろ帰るぞー」
大地さんがそう言ったので、私はリュックを背負った。忘れ物がないか隅々までチェックしてから、部室を出て鍵をかけた。盗まれるようなものはないけどね、念のため。
がやがやと歩きながら話し校門に向かう。そこには既に会いたくない人が待っていた。
「おーい、アカリーっ!」
『兄さん…』
手を子供みたいにぶんぶん振りながら笑いかける兄には脱力した。あんた幼稚園児か!
「青司にい!」
「おまえ翔陽か!でかくなりやがって~!」
翔ちゃんはエナメルを放り投げて兄さんに駆け寄った。最後に二人が会ったのは二,三年程前になる。いくら翔ちゃんが小柄だといえ、流石に成長している。兄さんは翔ちゃんの頭を鳥の巣みたいにグシャグシャにした。
そんな様子をみんなはポカンとして見ている。そりゃそうだわな。月島くんが露骨に迷惑そうな顔をして訊いてきた。せめてもう少し隠すとかさぁ、ねぇ?
「朱里この人何なの」
『えーっと…この人が私の兄、青司です』
私がテキトーに紹介すると、律儀な大地さんがお辞儀をした。
「朱里のお兄さんでしたか。烏野高校排球部主将の澤村大地です。妹さんにはマネージャーをやっていただいています」
「そうですか。初めまして、アカリがお世話になってます?」
『なんで疑問形なのよ、普通自分から挨拶するものでしょ!なんで大地さんからなのよ!』
再開して早々この人には疲れる。既に疲弊する私の隣で翔ちゃんと兄さんだけがニコニコしていた。