第2章 音駒の彼ら。
『ちょっと武田先生!烏養コーチ!どういうことですか?』
問い詰める私に二人はばつの悪そうな顔をした。そして、あろうことか烏養コーチが両手を合わせて頼み込んできた。
「悪い、アカリ。お前の事情は十分すぎるほど知っているが、今日だけ音駒に行っててくれ。猫又監督がマネージャーのいる気分を味わせたいとかで…頼む!」
『ムリムリムリムリ!ゼッッタイムリ!』
私は首を横に千切れんばかりに振った。
烏養コーチには悪いが、ここは譲れない。
「ま、そういうことなんで。それに、お前にとって知り合い?とかと話すチャンスなんじゃないのか。そういうわけで…」
あと頼む、と言い残し、烏養コーチは脱兎の如く逃げ出してしまった。武田先生もへこへこ謝りながら烏養コーチのあとを追って体育館に向かってしまった。
一人残された私は足りない脳ミソで必死に考えた。彼らに何をどう伝えよう。
①急にいなくなってごめんごめーん。
…軽すぎるな、うん。
②実は…おばあちゃんが病気で看病が…。
…重たいな。
③ホントゴメンナサイハンセイシテマス!
…逆にどうしたよ。
ダメだ、思い付かない!
どうしようどうしようどうしよう!!
人生最大のピンチだよ!!!
って、いつまでも考えていても仕方ないか。考えることを早々に放棄した私はふらふらと頼りない足取りで体育館に向かう。
ここで紹介、私の座右の銘。
"明日は明日の風が吹く"
よし、何とかしよう!