第15章 夏休み合宿~最終日~。
「イヤなわけねーだろ、ばーか」
くしゃり、と髪を撫でるのはクロ。その顔は優しくて、やさしくて。
「俺はガキの頃から好きなんだ。半年なんてあっという間に過ぎるだろ」
頭に乗るクロの手を掴み、そっと両手で包み込む。私のと違ってゴツいそれは、温かくて。いつも私が辛いときに助けてくれた。
『クロ、ありがとう』
今までの分も込めて、ありがとうを。
いつの日か、クロが好きだと言ってくれた笑顔で言った。涙でくしゃくしゃかもしれないけど、笑えてたかな、クロ?
「俺も、待ってます。朱里さんのペースで考えて、結論を出してください」
京治さんもそう言ってくれた。その私への気遣いが、とても嬉しくて。京治さんの手もぎゅっと握った。
『ありがとう、京治さん』
出会って一ヶ月と経ってないけど。貴方の気持ちも態度も言葉も全部に、ありがとう。
そして、最後は蛍くん。
「朱里の好きな時で良いから、とりあえず答えは出してよね。それまで、どれだけ時間がかかっても待ってるからさ」
『うん。ほんとに、ありがとう…』
蛍くんの手も、ぎゅうっと握る。
毒舌家で皮肉屋であまのじゃくで。それでも私への気持ちは本物だった。ありがとう。
最後にみんなに、一回ずつぎゅーと抱き付いた。みんなから香る匂いは少しずつ違って、なんだかドキドキした。
がっしりとした体格も、筋肉の付いた体も、男の子なんだなぁと無意識に感じた。
「それ、お前わざとやってんのか?」
『そんなわけないでしょ、クロ。だってもうしばらく会えないから…なんか、寂しくて』
てへっ、ぺろっ。区切って言ったら違くないですか?と京治さんにつっこまれた。
「でも、忘れないでくださいね」
『ん?』
「俺も、黒尾さんも、月島も。貴女のことが大好きなんです、心から」
思いがけない京治さんの言葉に、口許が弛む。不謹慎かな、でも笑っちゃった。
『三人とも、ありがとうっ!』
三人まとめてぎゅー!とする。
呆れながらも、私を撫でてくれるクロ。
優しく微笑む京治さん。
ぶっきらぼうだけど背中をさする蛍くん。
きっと今、私は自然な顔で笑えてる。