第15章 夏休み合宿~最終日~。
「えっ…」
「なっ…!」
「ハァッ!?」
京治さん、蛍くん、そしてクロ。それぞれに驚きの表情を浮かべる。
「ごめんって、どういう意味だよ?」
『クロ…あのね。私はみんなの気持ちがすごい嬉しいよ。ほんとに、嬉しいの。それは信じてくれる?』
そう問えば、こくりと頷く。それに少し微笑んで、話を続けた。
『前に京治さんが言ってたんだけど、"想いは伝えるもので、見返りは要らない、だからそれは素直に受け取っておけばいい"って』
「あの話、覚えてたんだ…」
まぁ、つい数日前の話だからね。
『でも、私はそうは思えなかったの。想ってくれるなら、それに応えたいって思う』
考えを中途半端に、
曖昧に濁して、
うやむやにしたら、
ちゃんと向き合わなきゃ、
ダメだって思ったんだ。
『でも、今は…ごめんなさい。みんなのこと好きなんだよ。でもそれは…っ』
「loveじゃなくて、like、デショ?」
蛍くんの言葉に、じわりと視界が滲んだ。
好きで、好きで、大好き。
すごく大切で、でもそれは。
恋愛感情とは、少し、違くて。
鼻を啜り滲む目元をこすり、口を開いた。
『応えたいのにできなくて歯痒くて、苦しい。でも、今は、整理できなくて。自分のこともそうだし、家族のことも部活のことも』
だからね、
みんなが良かったら、
こんな私でも好きだと言ってくれるなら。
『もう少し、時間が欲しい』
気持ちを整理するための、
考えを整理するための、
時間が、欲しいと。
『こんな私でも、好きでいてくれるなら。まずは春高まで、待ってほしいの。それで、落ち着いたら、ちゃんと答え、だすから』
それで、良いかな?
不安と期待の入り雑じった感情で、下唇を噛みながら、見上げたみんなは、驚くくらいに晴れやかな顔をしていた。