第2章 音駒の彼ら。
色々あって遂にゴールデンウィーク。
翔ちゃんがロードワーク中に迷子になるというびっくりなハプニングがあった。
無事戻ってきたときには嬉くって翔ちゃんに抱き付いた。
『翔ちゃん~!心配したんだからぁ!!』
「ごめんごめん…でも、友だちできたよ!」
翔ちゃんの言葉に私は訊き返した。
『友だち…?』
一体全体どうやったらロードワーク中に迷子になって、その先で友だちが出来るのか。
「そ!研磨って言って、ゲームが得意なんだ。それにプリン頭だった」
『は、えっ、ちょっ、研磨ぁ!?』
「あれ、知ってる?」
知ってるも何も。
私が今一番会いたくない人の一人だ。
私の頭にいつも無気力そうな彼の顔が浮かんだ。染め直すのが面倒だから、という理由で一度は金髪にした頭を放置している。本人としては、キャラの濃い音駒排球部の中で目立たないようにしたかったらしいが、結果として寧ろ目立つようになってしまったらしい。
やる気の無さそうなオーラとは違ってバレーのことになると、新しいゲームを買ったときみたいに楽しそう。そして凄腕セッターだ。
研磨…
それからクロも…
怒ってるんだろうなぁ…。
分かるよ。今の私、目が死んでるね。
「おーい、アカリ生きてるー?」
翔ちゃんが目の前で両手をぶんぶん振り回す。それが影山くんに当たりそうになった。
「あっぶねぇ。おい日向ァ!」
「ギャー!ゴメンナサーイ!!」
いつも通りおいかけっこを始めた二人。
『単細胞って悩みがなくていいなぁ…』
「朱里声出てるけど?」
『うそっ!?』
月島くんに言われて気付いた。慌てて口を押さえる。そんな私を見て月島くんはニヤリと笑った。嫌な予感…
「王様ー、朱里が単細胞だってサ」
「なっ、朱里ー!」
『きゃーっ!悪気はあったー!』
「あんのかよ、まてコラァ!!」
月島くんめ…
裏切りやがったな…
お陰で影山くんに追いかけられるハメになったじゃないか!
逃げる私に追う影山くん。
それを指して笑う翔ちゃんと田中先輩に西谷先輩。
おどおどする山口くんと旭さん。
大地さんとスガさんと縁下先輩は苦笑い。
こんな楽しい時間がいつまでも続けばいいのにと心から思った。