第2章 音駒の彼ら。
「翔陽に朱里ちゃん、おはよう」
「おはよー母さん」
『おはようございます。昨日はすいませんでした。お洗濯までしてもらっちゃって…』
翔ちゃんママは私が熟睡中、服をそっと着替えさせてくれて(勿論、翔ちゃんは見てないよ)、サブバッグに入っていたYシャツや着ていた服を洗ってくれたのだった。
「いいのよ~。翔陽ので洗濯は回さなきゃいけなかったし。朝ごはんできてるからね、あとお弁当も二人分♪」
『ありがとうございます!』
翔ちゃんの妹、なっちゃん(本名"夏")も起こして四人で朝ごはんを食べた。みんなで談笑しながら食べるご飯はいつもより美味しく感じた。
翔ちゃんママとなっちゃんに見送られて私たちは学校に向かった。
朝練中。
私は休憩中の選手たちに潔子さんとスポドリやらタオルやらを渡していた。
『旭さんどうぞ!あ、スガさんも!』
「おう、ありがとな」
「サンキュー!」
にっこり笑って手渡すと、スガさんが私の顔を覗き込んできた。
「朱里ー、昨日もしかして泣いた?」
『うぐっ…な、泣いてませんよ』
自分でも分かる。
目がすっごい泳いでるね。
そんな私にスガさんは苦笑いした。
「無理すんなよ?泣きたくなったらいつでも胸貸すし。あんま一人で抱え込むなよー」
そう言ってスガさんはニッと笑った。いつかスガさんやみんなにも本当のこと言えるといいな。きっと言える。だって、翔ちゃんに言えたんだから。
「おーい、ミーティング始めるぞー」
烏養コーチに呼ばれ駆け足で集まる。開け放たれたドアの外に広がる空はくもりのない蒼で、それを見るだけで私の心は軽くなった。