第14章 夏休み合宿~五日目~。
【月島 side】
目の前で黒尾さんに抱き付いて泣く朱里。それを見ながら、俺は思った。
ああ、無力だ
君の泣く顔は見たくなかった。いつも笑顔で笑っていて。時々する口論すら楽しかった。
同じだと思ってた
同じたと思いたかった
君も俺と一緒で、素直になれないだけだと思いたかった。でも実際は違った。
君は俺より全然真っ直ぐだった。呆れるくらいに真っ直ぐだった。日向と似ているところがあるなら、きっとそこだ。
君の隣は、俺には眩しすぎる
君の光は、俺には眩しすぎるんだ
だから俺は、君が他の男の腕の中にいてもなにも出来ない。なにもしてやれない。
ああ、無力だ
でも、好きなんだ
堪らなく好きなんだ
その笑顔を、俺だけに向けてほしいと
その視線の先には、俺がいてほしいと
その声で呼ぶのは、俺だけであってほしいと
その心には、俺だけがいてほしいと
貪欲にも、そう思ってしまった
喉から絞り出すように言った、ごめんの一言。それを君は、俺は悪くないと言った。どうしてそこまで、他人に優しくなれるの。
君と俺とは、違いすぎるよ
でも、でもね
好きなんだ
いつでも優しい
君が好きなんだ
もし君が、俺を許してくれるなら
君を好きになった俺を、許してくれるなら
今までも
そしてこれからも
俺は、君だけを愛そう
君だけに、ずっと恋していよう
嗚咽が止まってきた朱里の頭を見ながら、俺は一人、覚悟を決めた。
【月島 side Fin.】