第14章 夏休み合宿~五日目~。
【side 黒尾】
アカリは俯いて確かに言った。"だって分かんないんだもん"と。
「分かんないっつーのは…」
『分かんないっ!』
眉毛を不安げに垂れて、目を少しだけ潤ませて、口をへの字にして。アカリは辿々しく話し出した。
『クロも京治さんも蛍くんも、みんな好き。告白してくれてすごく嬉しかった。みんな大事で一番なんて選べない。みんなが大好き、じゃあダメなのかな…』
しゅんとなるアカリ。俺たちは顔を見合わせた。俺たちの一方通行な想いが、ここまでアカリを苦しめてたなんて。
「悪い。結論を急がせるつもりはなかった」
『でもっ…みんなの想いに応えられない私が、すごく、イヤだ…』
「朱里は自分を責めることないデショ」
「勝手に好きだっていってるだけっスから」
『せっかく"好き"って言ってくれるなら…私はそれに応えたい。でもそれは…っ』
「二人をフるっつーこと、だろ?」
言葉の先を繋ぐと、アカリはこくりと頷いた。目にはこぼれそうな涙が湛えられている。
こんな顔をさせるつもりじゃなかった。
俺は、こいつの、笑った顔が好きなんだ。
ずっと隣で笑って欲しいと、願ったんだ。
なんで、泣かしてるんだよ…クソッ
涙を必死に堪えるアカリに、俺は頭を撫でてやることしか出来なかった。