第14章 夏休み合宿~五日目~。
「なんで他の男と手、繋いでるの?」
『わっ、私はまだ蛍くんのものじゃない!』
「まだ?」
『今のは言葉のあやです!』
慌てて反論する私を、真っ赤な顔で言われてもね、と蛍くんは笑った。
「こらツッキー、近いぞー」
「ああ、黒尾さんいたんですか?」
「最初に三人でって言ってただろ!」
「そうでしたっけ?」
二人が熾烈な争いをしている間に、私は避難。京治さんの背中の後ろに、こっそりと隠れた。
「今のうちに逃げますか?」
『そうしたいけど…』
「アカリ、どこ行く気?」
『クロがそうさせてくれない!』
涙目で訴えると、京治さんは諦めましょうと苦笑いした。
蛍くんも来たので、四人で輪になるように座った。私の右はクロ、左は京治さん、正面には蛍くんが座っている。
重々しい雰囲気の中、クロが口を開いた。どうしよう、すぐにでも立ち去りたい。嫌な予感がすると私の本能が告げているのだよ!
「…アカリは俺ら三人、全員に告白されてるんだよな?」
『…ハイ』
「誰にするか決まったのか?」
『…イイエ』
「じゃ、誰が一番彼氏の位置に近い?」
『…アイドンノー』
「真面目に答えろ」
『だって…』
クロが怖い声を出した。私は下唇を尖らせて、言った。
『だって分かんないんだもん。誰が好きなのかなんて、分かんないもん』
駄々っ子みたいなセリフに、みんなが目を丸くした。
だって、本当に分かんないんだもん!