第14章 夏休み合宿~五日目~。
ネコチーム4セット・フクロウチーム3セット獲得の8セット目中盤。
京治さんが拾い、木兎さんがアンダートスをして、翔ちゃんががラストを任せられる。
身長162.8cmの翔ちゃんを約190cmのネコチームがブロック。三枚壁はさすがにキツい。ゾォン…と恐ろしげな雰囲気を醸し出すくらいで、見てるこっちがハラハラする。
「これはもう"壁"って言うより"傘"だろ。どこにも打つ場所なんか—…」
『ですよね…』
まさかのキルブロック×三枚と対峙する正ちゃんを京治さんと二人で分析する中、翔ちゃんは両の眼を開いて、見た。ボールをその目でしっかりと、捉えた。
翔ちゃんは傘の端(リエーフの指の先っちょ)を狙って腕を振り抜いた。見事ブロックアウトを決めた。
"ブロックアウト"はバレー用語の一つ。ブロックする手の先端を狙い、ボールを打つ。ブロックに接触したボールが、そのままコートの外に出て、攻撃した側の得点になるのだ。
いつもスパイクを打ってるだけだった翔ちゃんの、大きな進歩だ。
『すごい翔ちゃんブロックアウトじゃん!』
「チビちゃんすげーな」
「よぉくやったぞー!」
翔ちゃんをみんなで褒める。クロも感心、木兎さんもぐりぐり撫でてる。あの場面で決めると思わなかったから、京治さんも驚いていた。
そして、木兎さんがまたもやふんぞり返って言った。
「2mの壁を相手に戦う小さな猛者に! 俺が必殺技を授けよう!」
「さっきよりでかくなってます」
「あかーし、そこはスルーして!」
京治さんとクロが半信半疑な表情をする一方、翔ちゃんは、必殺技…!?と目を輝かせた。
なんか、純粋で羨ましいわぁ…
その後、木兎さんによる翔ちゃんへの"必殺技レクチャー"が行われた。こうして、バレー三昧、バレーしかないくらいの合宿の最後の夜が更けていったのでした…